この記事の目次
二次相続とは?基礎から学ぼう
ポイント
二次相続は、家族内で最初に亡くなった方の相続(一次相続)が完了した後、残された配偶者が他界したときに生じる2回目の財産分配のことを指します。
理由
一般的な家族構成では父母と子どもがいますが、両親は異なるタイミングで亡くなることがほとんどです。最初にどちらかの親が他界して相続が発生し、その後もう一方の親が亡くなると再度相続が生じます。
例
たとえば、父親が他界したとき、母親と子どもたちが父親の財産を受け継ぎ(一次相続)、その後母親が亡くなると子どもたちが母親の財産を受け継ぎます(二次相続)。一次相続の場合は母親が調整役となれますが、二次相続では両親がいないため、子どもたちだけで話し合いをしなければなりません。
ポイント
二次相続は一次相続と比較すると様々な問題が起きやすく、相続税も高額になる傾向があります。

二次相続が抱える問題点とは
ポイント
二次相続では、親族関係のもめごとと相続税の増加という2つの大きな課題が発生しやすくなります。
理由
一次相続では生存している親(多くは母親)が間に入り、子どもたち同士の対立を防ぐことができます。しかし二次相続では両親とも亡くなっているため、子どもたち同士で遺産分割について話し合う必要があります。また相続税計算においても、一次相続で適用できる控除や特例が二次相続では使えなくなることが多いのです。
例
たとえば、母親が亡くなった二次相続では、兄弟間で「私は母の面倒を見ていたから多く受け継ぐべき」「兄は母から生前に金銭的支援を受けていたから少なくすべき」といった意見が対立し、相続トラブルへと発展することがあります。また、相続税額が一次相続の2〜3倍になるケースも少なくありません。
ポイント
二次相続の問題は事前に適切な対策を取らなければ、家族関係の悪化や多額の相続税負担につながる可能性があります。
二次相続で相続税が増える3つの理由
ポイント
二次相続では一次相続よりも相続税が増加する傾向があります。その主な理由は3つあります。
理由
- 配偶者控除が使えなくなる:一次相続では配偶者に対する税額軽減(配偶者控除)があり、1億6000万円または法定相続分まで相続税がかかりません。しかし二次相続では配偶者がいないためこの控除が適用できません。
- 基礎控除が減少する:相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されますが、二次相続では配偶者が亡くなっているため法定相続人が1人減り、基礎控除額が600万円少なくなります。
- 小規模宅地等の特例が適用しづらくなる:居住用の土地を相続する場合、一次相続では配偶者への相続で特例が適用できますが、二次相続では子どもたちが同居していないと特例を受けられないことが多くなります。
例
たとえば、遺産総額が2億円の場合、一次相続では配偶者控除などを活用して相続税を数百万円程度に抑えられることもあります。しかし二次相続では同じ2億円の遺産に対して配偶者控除が利用できず、基礎控除も減るため、数千万円の相続税が発生することもあるのです。
ポイント
二次相続で相続税が増える主な要因は、一次相続で利用できる「配偶者控除」が使えなくなることと、基礎控除額が減少することです。
相続税の負担を比較してみよう
ポイント
具体的な数値で一次相続と二次相続の相続税負担の違いを確認してみましょう。
理由
実際の数字を見ることで、二次相続時の相続税の増加がどれほど大きいのかを把握できます。この差異は配偶者控除の有無や基礎控除の減少が主な原因となっています。
例
【家族構成】父、母、子ども2人の場合 【遺産総額】それぞれ2億円と想定
ケース1:一次相続で配偶者に80%相続させた場合
- 一次相続:配偶者に1億6000万円(80%)、子どもに各2000万円を相続
- 二次相続:子どもに各8000万円を相続
- 総相続税額:約2680万円
ケース2:一次相続で配偶者に50%相続させた場合
- 一次相続:配偶者に1億円(50%)、子どもに各5000万円を相続
- 二次相続:子どもに各5000万円を相続
- 総相続税額:約2120万円
ポイント
一次相続の段階から二次相続を見据えた遺産分割を行うことで、総相続税額を560万円抑えることができました。一次相続で配偶者にすべてを相続させるのではなく、子どもにも適切に分配することが、二次相続を含めた全体の相続税を抑える鍵となります。
二次相続のトラブルパターン
ポイント
二次相続では特有のトラブルが起こります。主なトラブルパターンを見ていきましょう。
理由
両親がともに亡くなり、子どもたちだけで話し合わなければならない二次相続では、感情的な対立が生じやすくなります。また、一次相続時に予想していなかった問題も表面化することがあります。
例
不動産の分割によるもめごと:実家など分けにくい不動産の取扱いについて、売却するか現物相続するかで意見が分かれたり、売却価格や分配方法で合意できなかったりします。
介護の貢献度によるもめごと:「私は母と一緒に住んで介護したが、姉は年に数回顔を出しただけ」など、親の介護に尽くした人が相続で優遇されるべきだと主張して対立することがあります。
遺産隠しや流用の疑い:親と同居していた相続人が親の財産を使ったり、隠したりしていると他の相続人から疑われるケースも見られます。
ポイント
二次相続のトラブルは、親という調整役がいないため深刻化しやすく、きょうだい関係を永続的に損なうこともあります。事前の準備が非常に重要です。
二次相続対策の6つの方法
ポイント
二次相続の問題を防ぐには、一次相続の時点から対策を施しておくことが大切です。効果的な対策方法を6つご紹介します。
理由
二次相続の問題は、一次相続の時点で適切な対策をしておけば防げることが多いです。配偶者の生活を確保しながらも、将来の相続税やトラブルを減らす工夫が必要になります。
例
1. 生前贈与を活用する 毎年110万円までの贈与は贈与税がかからないため、一次相続後、残された配偶者から子どもへ計画的に財産を移していくことで、二次相続時の遺産総額を減らせます。ただし、2024年1月からは相続開始前7年以内の贈与が相続税の対象となるため、早めの対策が必要です。
2. 配偶者の資産を増やしすぎない 一次相続で配偶者の生活に必要な分だけを相続させ、それ以上の財産は子どもたちに分配することで、二次相続時の相続税負担を軽減できます。特に家賃収入がある不動産や値上がりが期待できる株式などは、一次相続で子どもに相続させると効果的です。
3. 生命保険を活用する 生命保険金には法定相続人1人あたり500万円の非課税枠があります。一次相続時に保険金の受取人を子どもにしておくことで、配偶者を通さずに子どもに財産を移せます。
4. 実家は子どもに相続させる 一次相続の時点で、小規模宅地等の特例を使って子どもに実家を相続させることで、評価額を大幅に下げることができます。二次相続で特例を使おうとすると、同居などの条件が厳しくなります。
5. 相続する財産の種類を工夫する 一次相続の時点で、配偶者には現金や定期預金など資産価値が固定されているものを、子どもには将来値上がりが期待できる不動産や株式などを相続させると、二次相続時の負担が軽減します。
6. 相次相続控除を活用する 一次相続から10年以内に二次相続が発生した場合、一次相続で支払った相続税の一部を二次相続の税額から控除できる「相次相続控除」を利用しましょう。
ポイント
二次相続対策は早ければ早いほど効果的です。配偶者の生活の安定を最優先にしつつ、将来の相続税負担を減らすバランスの取れた対策を検討しましょう。
二次相続トラブルを防ぐための遺言書
ポイント
遺言書は二次相続でのトラブルを防ぐ最も効果的な手段です。
理由
一次相続時に残された配偶者が遺言書を作成しておくと、自分の意思を明確に伝えることができ、子どもたち同士の争いを避けられます。また、遺産分割協議が不要になり、相続手続きもスムーズに進みます。
例
配偶者が遺言書に「長男には不動産を、次男には預貯金を相続させる」と明記しておけば、兄弟間の話し合いが不要になります。また、「長男は私の介護に長年尽くしてくれたので、預貯金の60%を相続させる」など、法定相続分と異なる分割理由も記載しておくことで、相続人間の不満を減らせます。
特に重要なのは、遺言書に「なぜそのような分け方をしたのか」という理由を添えることです。これにより、相続人の納得が得られやすくなります。
ポイント
遺言書は公正証書遺言にすると最も安全です。自筆証書遺言の場合は法務局での保管制度を活用するとよいでしょう。遺言書作成時には専門家に相談することをおすすめします。
二次相続でもめた場合の解決方法
ポイント
二次相続でもめてしまった場合は、早めに専門家に相談することが大切です。
理由
相続人同士が感情的になってしまうと、冷静な話し合いが困難になります。第三者である専門家が間に入ることで、客観的な視点から解決策を提案してもらえます。
例
弁護士への相談:弁護士は相続トラブルの解決に詳しい専門家です。弁護士に依頼すれば、相続人間の感情的対立を避けながら交渉を進めてくれます。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所での調停や審判の申立ての手続きもサポートしてもらえます。
税理士への相談:相続税の計算や申告、節税対策などについて専門的なアドバイスを受けられます。特に二次相続で相続税が高額になりやすい場合は、専門家のサポートが役立ちます。
家庭裁判所での調停:話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所での調停を利用する方法もあります。調停委員が間に入り、双方の意見を聞きながら解決策を模索します。
ポイント
相続トラブルは時間が経つほど解決が難しくなります。問題を感じたら早めに専門家に相談することが、家族関係を守るためにも大切です。
家族信託:二次相続対策の新しい選択肢
ポイント
家族信託は、二次相続の問題を根本的に解決できる新しい方法として注目されています。
理由
家族信託を利用すると、通常の遺言では指定できない「二次相続以降の承継者」まで決めておくことができます。また、認知症対策にもなるため、高齢化社会での資産管理の仕組みとして効果的です。
例
家族信託では、たとえば「父の財産を一次相続で母に移し、母が亡くなった後は長男に継がせる」といった、複数段階の財産承継を事前に決めておくことができます。
具体的には、父親(委託者)が自分の財産を母親(受託者)に信託し、母親が財産を管理・運用します。そして母親が亡くなった後は、あらかじめ決めておいた子ども(受益者)に財産が移ります。このような仕組みを整えておくことで、二次相続でのトラブルを未然に防げます。
特に同族会社の株式が相続財産にある場合、二次相続で争いが起きると会社経営に影響するリスクがありますが、家族信託ならその心配がありません。
ポイント
家族信託は比較的新しい制度で、設定には専門的な知識が必要です。信託銀行や弁護士など、家族信託の専門家に相談することをおすすめします。
まとめ:二次相続対策は早めの準備が鍵
ポイント
二次相続の問題は、早めの対策が何よりも重要です。
理由
二次相続では相続税が高くなりやすく、相続トラブルも生じやすいため、一次相続の時点、できれば両親健在のうちから対策を始めることが理想的です。
例
二次相続対策として効果的なのは以下の点です:
- 一次相続の時点で、配偶者に全ての財産を相続させるのではなく、バランスよく子どもにも分配する
- 配偶者の生活に必要な金額を見極め、それ以上の財産は生前贈与や保険などで子どもに移す
- 遺言書を残して、二次相続での遺産分割方法を明確にしておく
- 必要に応じて家族信託など新しい制度も検討する
- 専門家(税理士・弁護士)に相談して、家族の状況に合った最適な対策を立てる
ポイント
二次相続対策は、相続税を減らすことだけが目的ではなく、残された配偶者の生活を守りながら、子どもたち同士が争わないよう、家族の平和を保つためのものです。配偶者の生活の安定を第一に考えつつ、将来の相続に備えることが大切です。
相続は人生で数少ない大きなイベントです。特に二次相続は、両親がいない中で子どもたちだけで乗り越えなければならない大きな課題です。家族の絆を守るためにも、事前の準備と対策を怠らないようにしましょう。

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