家族信託で不動産登記をするメリット
遺言や成年後見に代わる財産を管理する方法として、家族信託を検討されている人が増えています。
家族信託では不動産を家族信託する場合、不動産登記をする必要があります。
今回は、家族信託で行う登記には、どんなメリットがあるのか解説します。
家族信託の概要
家族信託は、信頼できる家族に財産を託して、家族の方に財産管理をしてもらうしくみです。財産を家族に託す場合が多いので家族信託と呼ばれています。家族信託では、信頼できる人であれば、その人に財産を託すこともできます。
家族信託では、老後の認知症対策や相続対策をすることができます。法定成年後見制度では成年後見人を選ぶことはできませんが、家族信託では、財産を託したい人(委託者)が、財産を託される人(受託者)を選ぶことができます。
家族信託の登記とは
家族信託で必要な登記は2種類あります。
不動産を家族信託する場合、法務局での登記手続きが必要となります。家族信託に必要な登記には、次の2種類があります。
①所有権移転登記
所有権移転登記は、不動産の所有者を変更する登記です。家族信託を設定した場合、財産の名義は委託者から受託者に変更する必要があります。
不動産の名義を受託者に変更するために、「信託」による所有権移転登記を行います。所有権移転登記をする場合は、義務者(委託者)と権利者(受託者)が共同申請することになります。
信託を原因とする所有権移転登記については、登録免許税は非課税となっています。
②信託登記
信託登記は、受託者が一人で申請することができます。さらに、信託登記を行うと、信託目録が作成されます。信託目録には、家族信託の目的、信託財産の管理方法、信託終了の事由、その他信託条項が記載されます。
信託目録は不動産1物件につき1作られます。
登記事項証明書を取得すると、信託契約の重要な部分を見ることができます。
信託登記の登録免許税は、固定資産評価額の1000分の4となっていますが、
土地についてはしばらく間税率が固定資産評価額の1000分の3になっています。
家族信託の登記のメリット
信託財産は、委託者の財産・受託者の財産と分けて管理します。
家族信託の登記をすると、委託者の財産・受託者の財産と区別された信託財産として独立性を保つことができるというメリットがあります。
家族信託の登記をすると、不動産が家族信託されたものであることが明確になります。また、登記事項証明書を取得すると、登記記録の内容が公開されます。
つまり、家族信託の登記を行うと、不動産を家族信託していることが
誰でもわかるようになるというメリットがあります。
信託登記は法律上の義務
登記手続きをする場合、登録免許税が発生します。
家族信託で行う登記のうち、信託登記については、不動産を信託したときに必ずしなければならないと法律で義務付けられています。
信託法34条では、受託者の「分別管理義務」が規定されています。分別管理義務は、信託財産を受託者の財産や他の方の信託財産と分けて管理する義務です。
信託財産で登記・登録できる場合は、登記・登録をする必要があります。
不動産は登記できる財産ですので、家族信託を設定した場合、登記をする必要があります。つまり、信託登記は信託法で義務付けられています。
(分別管理義務)
信託法34条
第三十四条 受託者は、信託財産に属する財産と固有財産及び他の信託の信託財産に属する財産とを、次の各号に掲げる財産の区分に応じ、当該各号に定める方法により、分別して管理しなければならない。ただし、分別して管理する方法について、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
一 第十四条の信託の登記又は登録をすることができる財産(第三号に掲げるものを除く。) 当該信託の登記又は登録
二 第十四条の信託の登記又は登録をすることができない財産(次号に掲げるものを除く。) 次のイ又はロに掲げる財産の区分に応じ、当該イ又はロに定める方法
イ 動産(金銭を除く。) 信託財産に属する財産と固有財産及び他の信託の信託財産に属する財産とを外形上区別することができる状態で保管する方法
ロ 金銭その他のイに掲げる財産以外の財産 その計算を明らかにする方法
三 法務省令で定める財産 当該財産を適切に分別して管理する方法として法務省令で定めるもの
2 前項ただし書の規定にかかわらず、同項第一号に掲げる財産について第十四条の信託の登記又は登録をする義務は、これを免除することができない。
所有権移転登記は自己判断
家族信託を設定したとき場合、所有権移転登記もしますが、所有権移転登記というのは、法律上義務付けられていません。そのため、所有権移転登記するかどうかは当事者の自由です。
ただし、所有権の登記をしていない場合、不動産が信託財産になっていることを第三者に対抗できません。所有権移転登記をしていなければ、トラブルに巻き込まれる可能性がありますので気を付けてください。
トラブルを回避するために、所有権移転をしたときは、所有権移転登記を行う方が多いです。
家族信託(民事信託)の登記の期限
家族信託の登記はする必要がありますが、期限は定められていません。
しかし、信託契約を締結した後、登記しない長期間登記をしない場合、
トラブルが発生する可能性があります。
家族信託の目的を無事に達成するためにも、
信託契約した後になるべくはやく信託の登記を行った方がいいです。
まとめ
家族信託で不動産を信託財産に設定したときには、信託契約後に登記手続きを行う必要があります。
信託の登記手続きを自分で行おうとすると大変手間と時間がかかりますので、
司法書士に相談したほうがいいです。
家族信託の小冊子を作成しました。

