家族信託の場合、受託者を2人以上にすることは可能です。
受託者を複数人にする場合は、お互いの意見が合わずに財産の管理に関するトラブルが発生する可能性があります。
トラブルが発生した場合は、保存行為を除いて原則として受託者の過半数で決めることになります。
そのため、受託者を2人以上にする場合は、家族内で家族信託の法律専門職と一緒にきちんと話し合って、受託者を2名以上にするのか、受託者を2名以上にした場合に誰の意思決定を優先するような別段の定めを置くのか
(信託法第80条第6項)、
または、受託者は単独にして、他の兄弟は第二受託者として後ろに控えておくか、等の検討をしたほうがいいです。
第八十条
信託法80条
1 受託者が二人以上ある信託においては、信託事務の処理については、受託者の過半数をもって決する。
2 前項の規定にかかわらず、保存行為については、各受託者が単独で決することができる。
3 前二項の規定により信託事務の処理について決定がされた場合には、各受託者は、当該決定に基づいて信託事務を執行することができる。
4 前三項の規定にかかわらず、信託行為に受託者の職務の分掌に関する定めがある場合には、各受託者は、その定めに従い、信託事務の処理について決し、これを執行する。
5 前二項の規定による信託事務の処理についての決定に基づく信託財産のためにする行為については、各受託者は、他の受託者を代理する権限を有する。
6 前各項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
7 受託者が二人以上ある信託においては、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。ただし、受益者の意思表示については、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
この記事の目次
受益者を複数にするメリットと注意点
財産管理を分散することができる。
財産管理を分散できるというメリットがあります。
例えば、長男を賃貸マンションの受託者にして、その利益を還元するなり、相続させるなりする場合、
次男にも別の賃貸マンションを信託すべきでしょう。1人で複数の収益物件を受託するのではなく、財産を分割して管理することによって、不公平感の緩和に繋がります。
受託者には「善管注意義務」「忠実義務」といった重い責任がありますが、受託者を一人の人に任せることによってきちんと管理をしていなかったり、使い込んでしまったりなどといったリスクがあります。
また、一人ではどう管理・処分したらよいか判断できない時にも、他の受託者と話合うことによって円滑に進めることも可能となる場合もあります。
受託者を複数人にすることで受託者どうしでを監督・チェックしながら信託事務を行ったり、信託を一人だけの負担にせず、複数人で分け合うといったメリットがあります。
信託監督人を活用しましょう
家族信託の特徴は、信頼できる家族に財産の管理をしてもらうことです。
しかし、家族だからこそ、何かあった場合に感情的になり、親子関係にまで悪影響を及ぼす可能性があります。そのような場合に備えて、契約のときには「信託監督人」を追加したほうが良いでしょう。
信託監督人とは受託者が受益者のためにしっかりと信託事務を行っているかを確認する人のことです。
信託監督人をおいておけば、受託者を疑ったりせず、よい家族関係を維持することができます。
信託監督人は家族でもすることができますが、第三者の司法書士や行政書士であれば、客観的に確認をすることができます。
予備的受託者の設定
家族信託では受託者が死亡した場合に、その地位を相続人が継承することができません。そのため、賃貸物件などでは、管理運営が停止してしまいます。
その他にも受託者が破産した場合や辞任、解任した場合も信託は終了してしまいます。それに備えて、二次受託者を定めておいたほうがよいでしょう。
信託財産は受託者全員の「合有」となりますので(信託法第79条)、共同受託者の一人が任務終了した場合、残りの受託者が当然に権限を有することになります
(新たな受託者を追加で選任しなくても問題ありません)。
予備的受託者が定められていない場合、委託者と受益者の話し合いによって決めることになります。委託者がいない場合は、受益者が新たな受託者を決めることができます。
第七十九条 受託者が二人以上ある信託においては、信託財産は、その合有とする。
信託法第79条
成年後見制度と併用しよう
家族信託は成年後見制度とよく比較されますが、一番良い方法は2つ利用することです。家族信託は資産運用が目的なので、認知症などになった委託者の保護などの法律行為はできません。
[…] 家族信託を導入する家族は、委託者が高齢の場合が多いです。 […]