今回は家族信託と成年後見人の違いについて解説いたします。両方とも、認知症になられた方の財産を使えるようにするための制度ですが、それぞれ特徴があり、全く同じものではありません。
この記事の目次
家族信託と成年後見人制度の10の違い
家族信託と成年後見人制度の登場人物の違い
家族信託の登場人物は基本的に委託者・受託者・受益者です。
成年後見人制度の登場人物は成年後見人・成年被後見人です。
家族信託と成年後見人制度の始まりと終わりの違い
家族信託の期間は一律に定められていないので、自由に決めることができます。
成年後見人制度の始まりは、裁判所の手続きが終わった後。終わりは、また、本人が死亡した時、または本人(成年被後見人)の判断能力が回復したときです。
家族信託と成年後見人制度の重視するものの違い
家族信託の場合、「誰にして財産管理をしてもらいたいか」「どういう風に財産管理をしてもらいたいか」などを検討し、柔軟に家族信託の契約書を作成することができます。
成年後見人制度の場合、「本人のためになるか」「財産を守ることができるか」が重視されますので、裁判所が本人に不利益になると判断した場合、お金を出すことはできません。
家族信託と成年後見人制度の身上監護の有無の違い
家族信託では身上監護の機能はありませんので、家族として携わる可能性はあります。
成年後見人制度の場合、成年被後見人の財産管理だけでなく、成年後見人は成年被後見人の身上監護を行います。
家族信託と成年後見人制度の報酬の違い
家族信託の場合、家族信託契約を結ぶ際にに法律の専門家からサポートを受けると、初期費用として報酬が発生しますが、それ以降は費用が発生しません。
成年後見人制度の場合、成年後見人になるのは、多くの場合が弁護士や司法書士です。成年後見人としての報酬額は裁判所が決定し、成年被後見人の財産から報酬を受け取る仕組みになっています。この報酬は成年後見人がついている限り発生しますので、毎月費用負担が発生します。
家族信託では財産管理を家族(親族)などの身近な人が行うため、弁護士や司法書士などの毎月の報酬が発生しません。そのため、総合的に費用をおさえることができます。
家族信託と成年後見人制度の相続対策の違い
家族信託の場合、柔軟に財産管理ができるため継続して相続対策が可能
成年後見人制度の場合、財産の使い方が制限されるため、継続して相続対策することができません。
家族信託と成年後見人制度の財産管理者の違い
家族信託の場合、財産管理者に家族がなることができます。
成年後見人制度の場合、家庭裁判所が決定します。
※財産額が多い場合、司法書士や弁護士などの専門職の方がが選ばれることが多いです。
家族信託と成年後見人制度の財産状況の報告の違い
家族信託の場合、家庭裁判所への財産管理状況の報告は必要ありません。
成年後見人制度の場合、1年に1回家庭裁判所に財産管理状況の報告をする必要があります。
家族信託と成年後見人制度のメリットの違い
家族信託の場合、本人が認知症になっても、家族の方が代わりに財産の管理・運用をすることができます。
成年後見人制度の場合、生前に認知症などにより判断能力を失ったとしても、成年後見人が資産の保全をしてくれます。
家族信託と成年後見人制度のデメリットの違い
家族信託の場合、認知症などにより判断能力がなくなる前に家族信託契約を結ぶ必要がある。
成年後見人制度の場合、成年後見の申し立てや家庭裁判所への報告など手続きが大変。