栄養バランスの取れた良い食事について
栄養バランスの取れた食事とは、健康な体を維持するために必要な栄養素を偏りなく摂取することを指します。日本の伝統的な食事スタイルである「一汁三菜」(ごはん、汁物、3種類のおかず)は、栄養のバランスが整った理想的な食事の基本形とされています。
「一汁三菜」の基本構成は、次のようにそれぞれの役割が分かれています。
- 主食:ごはん、パン、めん類などの炭水化物を多く含む食品で、体を動かすエネルギー源となります。
- 主菜:肉、魚、卵、大豆製品など、たんぱく質が豊富な食品で、筋肉や臓器など体の組織をつくるもとになります。
- 副菜:野菜、きのこ、海藻類などを使った料理で、ビタミン・ミネラル・食物繊維が含まれており、体の調子を整える役割を果たします。
- 汁もの:味噌汁やスープなどで、不足しがちな栄養素を補う助けになります。
この基本形に、**乳製品(カルシウムの供給源)や果物(ビタミンの供給源)**をプラスすることで、よりバランスの取れた食事になります。

この記事の目次
栄養バランスの良い食事の基本的な要素
栄養バランスの良い食事を簡単に実践するには、主食・主菜・副菜という3つの柱を意識することが大切です。
主食はごはんやパン、めん類などの炭水化物を多く含む食品で、体や脳を動かすためのエネルギー源になります。主菜は肉、魚、たまご、大豆製品などのたんぱく質が豊富な食品で、筋肉や内臓、髪、爪などをつくる材料となります。副菜は野菜、きのこ、海藻類などのビタミン、ミネラル、食物せんいが豊富な食品で、体の調子を整える役割をします。
これらに汁ものを加えるとさらに栄養バランスが整い、乳製品や果物も取り入れるとカルシウムやビタミンの摂取量が増えます。
「3色食品群」の考え方も分かりやすく役立ちます。黄色(主食)、赤色(主菜)、緑色(副菜)の3色の食材を毎食そろえるよう心がけることで、必要な栄養素をバランスよく摂ることができます。
各栄養素の役割と適切な摂取バランス
わたしたちの体が健康に働くためには、三大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質)をバランスよく摂ることが欠かせません。
炭水化物は主に脳や体のエネルギー源となり、1日の摂取カロリーの50〜65%を占めるのが理想です。ごはんやパン、めん類などから摂ることができます。
たんぱく質は体の筋肉や内臓、髪、爪などの材料となり、全体のカロリーの13〜20%を目安に摂ります。肉、魚、たまご、大豆製品が主な供給源になります。
脂質はエネルギー源になるだけでなく、細胞膜のもとにもなり、総カロリーの20〜30%が適量です。肉の脂やバター、オリーブオイルなどに含まれています。
また、現代の食生活では食物せんい(野菜、果物、海藻など)、ビタミン類(A・B群・C・D)、ミネラル(カルシウム、鉄、カリウムなど)が足りないことが多いです。これらは体の調子を整え、代謝を促し、内臓の働きを保つために必要なものです。特に緑や黄色の野菜や果物、乳製品を意識的に摂ることで、これらの栄養素を補うことができます。
実践のためのポイント
- 食事全体のバランスを考える: 1食だけでなく、1日や1週間単位での栄養バランスを意識しましょう
- 食べる順番を工夫する: 野菜から食べると血糖値の急上昇を抑えられます
- いろいろな食品を取り入れる: 同じ食品に偏らず、多様な食材を選びましょう
- 適量を知る: 自分に必要なカロリーに合わせた食事量を把握しましょう
- 調理法を工夫する: 油の使用量を控えめにするなど、健康的な調理法を選びましょう
栄養バランスの良い食事は、健康維持のための基本です。毎日の食事に「主食」「主菜」「副菜」をバランスよく取り入れることで、必要な栄養素を過不足なく摂取し、健康的な生活を送ることができます。
食事バランスガイドの活用と具体的な実践例
「食事バランスガイド」は健康的な食事の目安を示す便利な道具です。コマの形で表現され、上から主食、副菜、主菜、乳製品、果物の順に並んでいます。これは必要量の多い順に配置されています。
例えば、1日の摂取カロリーが2,000〜2,400kcalの方は、主食を5〜7つ分(ごはん中盛り4杯程度)、副菜を5〜6つ分(野菜料理5皿程度)、主菜を3〜5つ分(肉・魚料理3皿程度)、乳製品を2つ分(牛乳1杯程度)、果物を2つ分(みかん2個程度)摂取するのが理想的です。
実践例として、朝食ではごはんに目玉焼き、ほうれん草のおひたし、ヨーグルトを組み合わせる、またはパンにゆでたまご、野菜、牛乳を添えるといった組み合わせが効果的です。
昼食では、うどんと魚のてんぷら、酢のもの、果物を組み合わせる、または肉や魚のおかずとサラダ、スープを添えたごはん料理などがバランスの良い選択です。
夕食では、主食にごはん、主菜に肉や魚、副菜に野菜料理を2品程度添えると栄養バランスが整います。
栄養バランスのよい食事と生活習慣病のつながり
栄養バランスのよい食事は生活習慣病を防いだり良くしたりする効果が直接あります。生活習慣病とは肥満症、糖尿病、脂質異常症、高血圧症などをまとめた呼び方で、かたよった食べ方や体を動かさないことが主な原因となるものです。これらの病気は血管を硬くし、最終的に脳卒中や心筋梗塞といった命にかかわる病気につながります。
バランスのよい食事の基本は、主食・主菜・副菜をうまく組み合わせた食事を一日に二回以上とることです。主食はエネルギー源となる炭水化物、主菜はたんぱく質や脂質がふくまれるもの、副菜はビタミン・ミネラル・食物せんいが多くふくまれる野菜や海藻類からなります。これらをバランスよくとることで、からだに必要な栄養素を適切な量で摂取できます。
生活習慣病を予防するためには、塩分や脂質(とくに動物性脂肪)のとりすぎに注意し、食物せんいやカリウムがたっぷりの野菜・果物、質のよいたんぱく質を積極的にとることが大切です。一日に必要な野菜の目標量は350グラムで、これは一日に5皿ほどの野菜料理に相当する量です。
食事をとる時間帯も重要なポイントで、とくに夜10時以降の食事は脂肪としてたまりやすいため避けるべきでしょう。食事回数を適切にして規則正しい生活リズムを保つことも、生活習慣病を防ぐ効果があります。
生活習慣病は初期の段階であれば悪化を防げるため、日々の食習慣を見直し、栄養バランスのかたよりやエネルギーのとりすぎを改善することが、健康に長く生きることにつながります。
栄養バランスのよい食事と認知症予防のかかわり
栄養バランスのよい食事は、認知症を予防するうえで大切な役割をはたしています。認知症はのうの働きが低下する病気であり、なかでもアルツハイマー型認知症が多くみられます。さまざまな研究からは、食べ物や栄養の状態が認知症になるリスクと関係していることがわかっています。
バランスのとれた食事は、のうに必要な栄養素をおぎなう効果があります。とくに重要なのは、オメガ3脂肪酸や抗酸化物質がたっぷりふくまれた食品です。オメガ3脂肪酸は魚(特にサーモンやマグロ)やあまに油にふくまれており、のうの健康をささえる脂肪酸として知られているものです。また、抗酸化物質は果物や野菜に多くふくまれ、のう細胞を酸化ストレスから守る働きがあります。
地中海ダイエットは認知症予防に効果があるとされ、オリーブオイル、ナッツ類、全粒穀物、新鮮な果物や野菜などを中心としています。これらの食品は体の炎症をおさえ、のうの血流をよくし、神経の健康を保ちます。
適切なカロリー摂取を心がけ、とりすぎの糖分や加工食品を避けることも大切です。白砂糖や脂肪が多い加工品は、インスリン抵抗性をひきおこし、認知症のリスクを高める可能性があります。実際に糖尿病や肥満の人は認知症になりやすいことが確認されているのです。
栄養バランスのよい食事は、からだの健康だけでなく、認知症予防にもかかせない要素といえます。食生活を見直すことで、認知機能を維持し、健康的な生活を送ることができるでしょう。
この食事法でおすすめなのは青魚、緑黄色野菜、果物、ナッツ類、全粒穀物、オリーブオイル、カレー、豆製品、赤ワインなどです。青魚にはDHA(ドコサヘキサエン酸)がたくさんふくまれており、記憶力や判断力をよくする効果が期待できます。また、緑黄色野菜や果物にはビタミンCやE、カリウムなどがふくまれ、これらには抗酸化作用があり、血液の流れをよくする働きがあります。
食事の方法としては、地中海式食事や和食が特におすすめです。地中海式食事は心臓や血管の健康にもよく、認知機能にもよい影響をあたえることがわかっています。和食には大豆製品や発酵食品が多くふくまれており、のうの情報伝達をたすける栄養素がふくまれています。
このように、食事の内容と食べ方を工夫することで、認知症を予防するための効果的な取り組みができるのです。
栄養バランスのよい食事をするメリット
栄養バランスのよい食事は、さまざまな面からわたしたちの健康と生活の質を高めます。適切な栄養素をバランスよく摂取することでえられる主なメリットをご紹介します。
1. 生活習慣病の予防と健康寿命の延伸
栄養バランスのよい食事は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を防ぐ効果が直接あります。日本の研究によると、主食・主菜・副菜をバランスよく組み合わせた食事パターンを続けている人は、そうでない人に比べて死亡リスクが15%も低いことがわかっています。とくに野菜類、果物類、豆類、海藻類、乳製品をたくさん食べ、肉類をほどよく控える食事パターンは、がんや循環器疾患、糖尿病のリスクを下げるとされています。
2. 免疫力の向上と病気の予防
バランスのよい食事からビタミンやミネラルを十分に摂取することで、免疫システムが強くなり、かぜやほかの感染症にかかりにくくなるでしょう。いろいろな食品からえられる抗酸化物質やファイトケミカルは、細胞を守り、からだの防御機能を高めてくれます。栄養バランスが整った状態では、からだの回復力も上がるため、病気になっても回復が早くなる効果も期待できます。
3. 身体機能と精神状態の安定化
栄養バランスのよい食事はからだだけでなく、こころの面にもよい影響をあたえます。必要な栄養素がしっかり摂れることで、のうや神経の機能が正常に保たれ、集中力や記憶力が向上します。また、血糖値の急な変動をおさえることができるため、気分の安定やストレスへの強さを高める効果もあります。
4. エネルギー代謝の向上と疲労軽減
適切な栄養バランスはからだのエネルギー代謝を効率よくします。炭水化物はからだとのうのエネルギー源となり、たんぱく質は筋肉や臓器の材料に、脂質はのう機能や脂溶性ビタミンの運搬に欠かせません。これらがバランスよく摂取できると、疲れを感じにくくなり、日常生活の活力が増します。とくに栄養素の代謝にはさまざまなビタミンがかかわるため、多様な食品から栄養を摂ることが大切です。
5. 健全な体重管理とボディメイク
バランスのよい食事は、自然と摂取カロリーを適正に保ちやすくなるため、健全な体重管理に役立ちます。極端な食事制限をしなくても、主食・主菜・副菜をバランスよく食べることで満足感がえられ、食べすぎを防げるでしょう。また、適切な量のたんぱく質と炭水化物を摂取することで、筋肉量の維持や増加にも役立ち、基礎代謝の向上につながります。
6. 消化機能と腸内環境の改善
食物せんいが豊富な野菜や果物、海藻類をバランスよく摂ることで、腸内環境が改善され、消化機能が向上します。よい腸内環境は栄養素の吸収効率を高めるだけでなく、免疫力の強化やこころの健康にも役立つことがわかっています。また、規則正しい食事習慣は胃腸の働きを整え、消化不良や便秘の予防にもつながるでしょう。
7. 健やかな肌や髪の維持
栄養バランスのよい食事は、肌や髪の健康維持にも重要な役割をはたします。たんぱく質は肌や髪の主成分であり、ビタミンEやビタミンCなどの抗酸化物質は肌の老化を防ぎます。また、質のよい脂質を適量摂取することで肌のうるおいが保たれ、乾燥を防ぐ効果も期待できるのです。
栄養バランスのよい食事をするメリットのまとめ
栄養バランスのよい食事を実践するには、「主食・主菜・副菜」を基本に、牛乳・乳製品や果物も取り入れた食事を心がけることが大切です。極端に特定の食品や栄養素に偏らず、さまざまな食材から必要な栄養素をバランスよく摂取することで、上記のようなメリットを受け取り、健康で活力ある生活を送ることができます。
