脂質異常症と認知症の関係とは？3つの予防策で健康寿命を延ばす

脂質異常症の予防と改善に役立つ生活習慣ガイド

脂質異常症は現代人の健康を脅かす「サイレントキラー」とも呼ばれています。悪玉コレステロールや中性脂肪の上昇、善玉コレステロールの低下は自覚症状がないまま進行し、気づかぬうちに動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中などの深刻な病気のリスクを高めてしまいます。肥満や認知症とも深く関わるこの状態は、適切な食生活や運動習慣を身につけることで予防・改善が可能です。この記事では、脂質異常症のメカニズムから予防法、改善のための具体的な食事療法や運動方法まで、最新の医学的知見に基づいた総合的なアプローチをわかりやすく解説します。日常生活に取り入れやすい工夫とともに、健康的な血液の状態を保つための実践的なガイドをご紹介します。

脂質異常症とは
脂質異常症とは、血液中の脂質（コレステロールや中性脂肪）のバランスが正常ではなくなった状態を指します。具体的には、以下のいずれか、または複数が当てはまる場合に脂質異常症と診断されます：

悪玉コレステロール（LDL）が基準値より高い
中性脂肪（トリグリセライド）が基準値より高い
善玉コレステロール（HDL）が基準値より低い

以前は「高脂血症」と呼ばれていましたが、脂質の異常が「高い」場合だけでなく「低い」場合も含まれるため、現在では「脂質異常症」という名称が用いられています。

脂質異常症の診断基準
日本動脈硬化学会のガイドラインによると、脂質異常症は早朝の空腹時に行う血液検査で診断され、以下の基準に当てはまる場合に該当します：

分類	対象となる脂質	基準値
高LDLコレステロール血症	LDLコレステロール（いわゆる「悪玉コレステロール」）	140mg/dL以上
境界域高LDLコレステロール血症	LDLコレステロール	120～139mg/dL
低HDLコレステロール血症	HDLコレステロール（いわゆる「善玉コレステロール」）	40mg/dL未満
高トリグリセライド血症	中性脂肪（トリグリセライド／TG）	150mg/dL以上

これらの数値は、動脈硬化や心血管疾患のリスクを評価する上で重要な目安となります。

脂質の役割と仕組み

コレステロールと中性脂肪のはたらき

コレステロールは細胞膜や消化吸収に重要な胆汁酸、ホルモンの材料となる大切な物質です。 中性脂肪はエネルギー源として蓄えられ、体を温めたり、外からの衝撃を和らげたりする役割を持っています。しかし、これらの脂質が多すぎると問題が起きます。

善玉と悪玉コレステロールの違い

■ 善玉コレステロール（HDL：High-Density Lipoprotein）

役割：血管内にたまった余分なコレステロールを回収し、肝臓に運ぶ。
効果：動脈硬化を防ぐ働きがある。
通称：「掃除屋さん」的な存在で、血管をキレイにしてくれる。

■ 悪玉コレステロール（LDL：Low-Density Lipoprotein）

役割：肝臓から全身の細胞にコレステロールを運ぶ。
効果：必要以上に増えると、血管の壁にコレステロールがたまり、動脈硬化の原因になる。
通称：「ゴミをまき散らす」ような存在。

脂質異常症のリスクについて

動脈硬化との関係

脂質異常症がもたらす最大のリスクは、動脈硬化（血管の老化や詰まり）を進めることです。
血液中にコレステロールや中性脂肪が多い状態が続くと、余分な脂が血管の内側にたまり、「プラーク（粥腫）」と呼ばれる塊になります。このプラークが大きくなると、血管がだんだん狭くなり、血流が悪くなってしまいます。

深刻な健康への影響

脂質異常症をそのままにしておくと、以下のような重大な病気につながるリスクが高まります：

心臓の病気：狭心症や心筋梗塞など
脳の病気：脳梗塞や脳出血など
足の血管の病気：下肢閉塞性動脈硬化症（足の血流が悪くなる病気）

特に注意が必要なのは、脂質異常症はほとんど自覚症状がないという点です。知らないうちに動脈硬化が進行し、突然これらの病気を引き起こすことがあります。
そのため、定期的な健康チェックや血液検査がとても大切です。

脂質異常症の原因と注意すべきポイント

脂質異常症は、血液中の脂質（コレステロールや中性脂肪）のバランスが崩れることで起こります。その主な原因には次のようなものがあります：

肉や揚げ物、魚卵など脂っこい食べ物のとりすぎ
運動不足
肥満（特にお腹まわりに脂肪がたまる「内臓脂肪型肥満」）
喫煙
アルコールの飲みすぎ
ストレス
家族から受け継いだ体質（遺伝）

この中でも、「内臓脂肪型肥満」は特に中性脂肪が増える原因として重要です。

脂質異常症のリスクについて

脂質異常症は、ほとんど自覚症状がないため気づかれにくい病気です。しかし、そのままにしておくと、将来深刻な健康トラブルを引き起こすことがあります。とくに注意すべきなのは「動脈硬化」のリスクです。

動脈硬化が進むしくみ

脂質異常症の最大の危険は、動脈硬化（どうみゃくこうか）を進行させることです。
血液中にLDLコレステロール（悪玉コレステロール）や中性脂肪が多い状態が続くと、余分な脂質が血管の壁にたまり、「プラーク（粥腫：じゅくしゅ）」というかたまりを作ります。

初期のプラークはやわらかく、壊れやすいものですが、次第に血管の壁が厚く硬くなって、血管が狭くなり、血液の流れが悪くなります。このような状態を「粥状動脈硬化（じゅくじょうどうみゃくこうか）」といいます。

さらに進行すると、壊れたプラークが原因で「血栓（けっせん）」という血のかたまりができ、血管を完全にふさいでしまうこともあります。

脂質異常症による重大な病気のリスク

脂質異常症が原因で進行する動脈硬化は、さまざまな深刻な病気を引き起こす可能性があります。以下に代表的な病気を紹介します。

1. 心臓の病気（心疾患）

狭心症（きょうしんしょう）：心臓に血液を送る冠動脈が狭くなり、心臓の筋肉に十分な酸素や栄養が届かなくなります。胸の痛みなどが起こります。
心筋梗塞（しんきんこうそく）：冠動脈が完全に詰まってしまい、心筋の一部が壊死してしまう命に関わる病気です。

2. 脳の血管の病気（脳血管疾患）

脳梗塞（のうこうそく）：脳の血管が詰まり、脳の細胞が酸素不足で壊れてしまいます。
脳出血（のうしゅっけつ）：脳の血管が破れて出血し、脳を圧迫することで重大な障害を引き起こすことがあります。

3. 末梢血管の病気（手足の血管）

下肢閉塞性動脈硬化症（かしへいそくせいどうみゃくこうかしょう）：足の血管が狭くなり、歩くと足に痛みやしびれが出る病気です。

脂質異常症は、これらの病気を引き起こす「重要なリスク因子」の一つです。放っておくと命に関わる深刻な事態につながることもあります。

中性脂肪が高いときの特別なリスク

中性脂肪（トリグリセリド）が高すぎると、以下のような特有の健康リスクが出てきます：

血管の損傷：中性脂肪が多すぎると、血管の内側が傷つきやすくなります。
急性膵炎（すいえん）：中性脂肪が500mg/dL以上と非常に高い状態が続くと、激しい腹痛を伴う急性膵炎を起こすことがあります。
脂肪肝（しぼうかん）：お酒や脂質・糖質のとりすぎで、肝臓に脂肪がたまり、脂肪肝になることがあります。
糖尿病との合併：中性脂肪が高い人は、糖尿病を併発するリスクも高くなります。

脂質異常症のリスク評価と分類方法

日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、脂質異常症のリスクを評価するためのチェック項目が示されています。

評価項目は以下の通りです：

LDLコレステロール値（悪玉コレステロール）
血圧（特に高血圧）
糖の代謝異常（例：糖尿病）
喫煙習慣
家族歴（両親や兄弟に心筋梗塞・脳梗塞の経験者がいるか）
年齢と性別

これらの項目にポイントをつけて合計し、以下のようにリスク分類されます：

低リスク
中リスク
高リスク
超高リスク

分類に応じて、コレステロール値の目標や治療の進め方が決められます。

（例）
52歳の男性で、以下の条件にあてはまる人の場合：

収縮期血圧：145mmHg
糖代謝異常なし
LDLコレステロール：245mg/dL
HDLコレステロール：32mg/dL
喫煙者

この方は、合計17ポイントとなり「中リスク」と判定されます。

放置によるリスクの進行

脂質異常症は、初めのうちは症状が出ないため見逃されがちですが、放っておくと危険が時間とともに高まります。
コレステロールや中性脂肪が高い状態が何年も続くと、少しずつ動脈硬化が進み、10年後、20年後に突然、心筋梗塞や脳卒中として現れることがあります。

特に注意が必要なのが「家族性高コレステロール血症（FH）」です。これは遺伝的にコレステロールが非常に高くなる病気で、

男性では20代から
女性では30代から

心筋梗塞などの重い動脈硬化性疾患を起こしやすくなります。重症の場合、子どものうちに心筋梗塞を起こすこともあります。

脂質異常症と他の生活習慣病との関係

◆ 脂質異常症と高血圧

脂質異常症と高血圧は、どちらも動脈硬化を進める大きな要因です。この2つが同時にあると、心臓病や脳卒中などのリスクがさらに高まります。

動脈硬化が進むしくみ

脂質異常症：LDLコレステロール（悪玉）が血管の壁にたまり、プラーク（脂のかたまり）ができます。
高血圧：強い血圧が血管を傷つけ、その部分にさらにコレステロールがたまります。
→ このように、傷ついた血管に脂質がたまる悪循環が起こり、動脈硬化がどんどん進みます。

インスリン抵抗性の関与

インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が、脂質異常症・高血圧・糖尿病の共通の原因となり、3つの病気が連鎖的に悪化します。これを「トリプルリスク」と呼びます。

合併症のリスク

病気の種類	合併症の内容
心臓病（心血管疾患）	心筋梗塞や狭心症のリスクが上がる
脳の病気（脳血管疾患）	脳梗塞・脳出血の発生率が高くなる
腎臓の病気	腎機能の低下や腎不全の進行

管理のポイント

生活習慣の見直し：塩分を減らす、適正体重を保つ、運動を取り入れることで、両方の改善が期待できます。
薬の併用：必要に応じて、コレステロールを下げる薬（スタチンなど）と血圧を下げる薬を使います。
定期検査が重要：症状が出にくいため、健康診断などで早めに見つけて対処しましょう。

脂質異常症と高血圧が同時にある状態は「沈黙の危険因子」とも呼ばれ、気づかないうちに内臓にダメージを与えるため、しっかりとした管理が欠かせません。

脂質異常症と糖尿病

脂質異常症と糖尿病も深く関わっており、どちらか一方だけでなく、両方あると動脈硬化や心臓病のリスクが大きく高まります。

病気の進み方

インスリンがうまく働かない（インスリン反応の低下）
- 糖尿病では、インスリンの働きが弱まり、中性脂肪の分解が進まず、血中の中性脂肪が高くなります。
- 同時に、HDL（善玉）コレステロールが減り、LDL（悪玉）コレステロールが増えやすくなります。
高血糖が脂質に与える影響
- 血糖値が高い状態が続くと、肝臓が余分な糖を中性脂肪に変え、脂質異常症が悪化します。
- 糖尿病による血管へのダメージも、動脈硬化を早める原因になります。

合併症のリスク

状態	リスク
動脈硬化	心筋梗塞や脳卒中が起こりやすくなる
小さな血管の障害	腎臓や目の病気（糖尿病腎症・網膜症）を引き起こす
心臓血管の病気	冠動脈疾患の危険性が2〜4倍に増える

治療のポイント

生活習慣の見直し：糖分・脂質のとりすぎに注意し、有酸素運動（1日30分のウォーキングなど）を取り入れましょう。
適正体重の維持：体重を落とすことで、インスリンの働きが良くなります。

このような状態は「メタボリックシンドローム」の代表例で、早めの対処が将来の心臓病や脳卒中を防ぐカギになります。

◆ 脂質異常症と肥満

肥満は脂質異常症の大きな原因のひとつです。
とくに「内臓脂肪型肥満（お腹の中に脂肪がたまるタイプ）」になると、

中性脂肪が高くなりやすい
善玉コレステロール（HDL）が少なくなりやすい

このような状態は動脈硬化が進みやすく、「メタボリックシンドローム」の基本的な体の状態とされています。

◆ 肥満が脂質異常症を引き起こすメカニズム

インスリン抵抗性が関係している

内臓脂肪が増えると、体の中で「インスリン」というホルモンの効き目が悪くなります（これを「インスリン抵抗性」といいます）。
すると、肝臓で**超低密度リポタンパク（VLDL）**という物質がたくさん作られるようになり、血液中の中性脂肪が増えてしまいます。

さらに、インスリンの働きが弱まることで、脂肪を分解して善玉コレステロール（HDL）に変える酵素の働きも低下します。
その結果、善玉コレステロールが減ってしまうのです。

◆ 脂質の代謝も乱れる

肥満の人は、食事で脂質を多く摂りがちなだけでなく、肝臓でも中性脂肪がどんどん作られる状態になります。
また、内臓脂肪からは「遊離脂肪酸」という物質が大量に出るようになり、脂質異常症をさらに悪化させてしまいます。

◆ 肥満に多い脂質異常のパターン

タイプ	特徴
中性脂肪の増加	150mg/dL以上：肝臓でVLDLが増えることが原因
善玉コレステロールの減少	40mg/dL未満：脂肪分解酵素の働きが弱まるため
悪玉コレステロールの増加	140mg/dL以上：動物性脂肪の摂りすぎが関係

◆ 放っておくとどうなる？

血管のダメージが進む
中性脂肪が高くて善玉コレステロールが少ないと、血管に炎症が起こりやすくなります。
そのため、心筋梗塞や脳卒中といった重大な病気のリスクが高くなります。
急性すい炎の危険も
特に中性脂肪の値が1000mg/dLを超えるような極端な場合は、「急性すい炎」という危険な病気を引き起こすことがあります。

◆ 管理と対策のポイント

◎ 生活習慣の改善が基本！

食事の見直し
カロリーは「理想体重×25キロカロリー」を目安に。
・動物性脂肪を控えめにする
・食物繊維（野菜、海藻、豆類など）をしっかり摂る
運動習慣の導入
週3〜5回、1日30分のウォーキングなど、有酸素運動を取り入れることで、善玉コレステロールが増えやすくなります。
減量の目安
今の体重から5％減らすだけでも、脂質のバランスが改善します！

◆ 遺伝も影響するけれど、生活習慣でカバーできる

もともと中性脂肪が高くなりやすい体質や、太りやすい遺伝をもっている人もいます。
でも、有酸素運動などを続けることで、リスクを下げることが可能です。

◆ まとめ

肥満が原因で起こる脂質異常症は、**「静かな危険因子」**と呼ばれます。
症状がなくても、血管や臓器をじわじわと傷つけていくため、健康診断で早めに見つけて対処することがとても大切です。

特に、内臓脂肪を減らすことは、脂質の異常を改善する最も直接的な対策になります。
早めの対策で、心臓や脳の病気を防ぎましょう。

◆ 脂質異常症と認知症の関係

◎ 血液中の脂質バランスが脳にも影響する

脂質異常症と認知症（特に脳血管性認知症）は、**血管の老化（動脈硬化）**を通じて深く関係しています。
血液中の脂質（コレステロールや中性脂肪）が多すぎると、脳の血管や神経細胞に悪い影響を与え、認知機能の低下（もの忘れ・判断力の低下など）を引き起こすリスクが高くなります。

◆ 病気が進むしくみ

● 動脈硬化による脳への血流不足

**悪玉コレステロール（LDL）や中性脂肪（TG）**が高いと、血管の内側に「プラーク」という脂のかたまりができやすくなります。
これにより脳への血流が少なくなり、酸素や栄養が足りなくなってしまいます。
血管が細くなったり詰まったりすることで、脳細胞がダメージを受けて、脳血管性認知症のリスクが上がります。

● 善玉コレステロール（HDL）の保護効果が重要

善玉コレステロールは、血管の炎症を抑えて守ってくれる働きがあります。
この善玉が少ないと、血管の炎症を防ぐ力が弱まり、認知機能が落ちやすくなるのです。

◆ 研究でわかっている主な関連性

種類	内容
脳血管性認知症	脂質異常による血管の老化が、脳の血流を妨げ、脳梗塞や細かい血管の障害を引き起こします。
アルツハイマー病	中年期にコレステロール値が高い人は、後年になってアルツハイマー型認知症のリスクが高くなる可能性があります。
認知機能の低下	悪玉コレステロールや中性脂肪が高い人は、20年後に記憶力や集中力が低下しやすいという研究結果があります。

まとめ

脂質異常症は、脳の血流や神経の健康に悪影響を与える可能性がある、見えにくいリスク因子です。
特に、「悪玉コレステロールが高い」「善玉コレステロールが少ない」「中性脂肪が多い」状態が長く続くと、将来の認知症発症リスクが高くなると考えられています。

健康な脳を保つためにも、脂質バランスを整えることはとても大切です。
早めに生活習慣を見直し、必要に応じて医師と相談しながら管理していきましょう。

◆ 脂質異常症に対するリスク管理のポイント

脂質異常症は、症状がほとんど出ないまま進行する「沈黙の危険因子」です。将来の脳梗塞や認知症を防ぐためには、日頃からの予防と管理がとても大切です。

◎ 生活習慣の見直しが第一歩

対策	期待される効果
食事の改善	動物性脂肪（バター・ラードなど）を控え、魚の油やオリーブオイルなどの「体に良い油（不飽和脂肪酸）」を意識してとることで、血液中の脂質バランスが整います。
運動の習慣化	毎日30分ほどのウォーキングなど、軽めの有酸素運動を行うと、善玉コレステロールが増え、中性脂肪が減少します。
ストレス対策	強いストレスは脂質の代謝を乱すため、心を落ち着ける時間や趣味の時間を持つことも健康維持に役立ちます。

◎ 必要に応じた医療のサポート

薬による治療（薬物療法）
悪玉コレステロールを下げる「スタチン」という薬は、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを減らすのに効果的です。
ただし、数値を下げすぎると脳出血のリスクがわずかに上がる可能性もあるため、医師と相談しながら適切なバランスを取ることが大切です。
定期的な検査
自覚症状がなくても、頸動脈（首の血管）の超音波検査やMRI検査などで血管の状態を確認し、病気のサインを早めに見つけて対応することが予防につながります。

◎ 予防は「中年期」からがポイント

脂質異常症は、若いうちからじわじわと体に影響を与え、中年期以降に動脈硬化や認知症といった大きな病気として現れることがあります。

だからこそ、

悪玉コレステロールと中性脂肪を抑える
善玉コレステロールを増やす
健康的な生活習慣を無理なく続ける

といった、コツコツとした日常の積み重ねが、将来の自分を守るための大切な予防策となります。

脂質異常症の予防と改善

予防と改善のための食事療法

1. バランスの良い食事

適正エネルギー摂取：摂りすぎに注意する
栄養バランス：
- たんぱく質（15～20%）：魚や大豆製品を積極的に食べる
- 脂質（20～25%）：動物性脂肪を控え、植物油や青魚を活用する
- 炭水化物（50～60%）：精製された糖質を控える
3食規則正しく食べる：特に朝食をしっかり摂り、夕食は寝る2時間前までに済ませる

2. 脂質の質と量の管理

動物性脂肪（飽和脂肪酸）を控える：肉の脂身、バター、生クリームなど
植物油（不飽和脂肪酸）を適量摂取する：オリーブオイル、亜麻仁油など
コレステロール摂取量を抑える：1日300mgまでを目安に
トランス脂肪酸を避ける：菓子パン、ファストフードなど

3. 推奨される食品

青魚：DHAやEPAを含み、血栓予防や血液をサラサラにする効果がある
大豆製品：植物性たんぱく質は血中コレステロールや中性脂肪を減らす働きがある
野菜・海藻・きのこ類：食物繊維がコレステロールの排出を促す
玄米や全粒粉パンなど：精製度の低い穀物は食物繊維が豊富

4. 控えるべき食品

脂身の多い肉類：特に加工肉製品
フライなどの揚げ物
乳製品：特に脂肪分の多いもの
卵黄：摂りすぎを避ける（1日に1/2個程度なら大丈夫）
お菓子類・清涼飲料水：糖分や脂質が多く含まれている

5. アルコールと食事の摂り方

適度なアルコール摂取：飲みすぎは中性脂肪を上昇させる
間食を控える：特に糖分や脂質の多いスナック類
水分摂取：十分な水分をとるよう心がける

運動療法による改善

1. 推奨される運動

有酸素運動を中心に：ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳など
運動強度：中程度（少し息が切れるが会話はできる程度）
運動時間：1日30分以上を目標に（無理な場合は10分×3回など分けてもよい）
頻度：毎日が理想的（最低でも週3日以上、週に合計180分以上）

2. 運動の効果

善玉コレステロール増加
悪玉コレステロール減少
中性脂肪の減少
内臓脂肪の減少
インスリンの効きをよくする
血圧の安定化

3. 運動の始め方

無理のない範囲で少しずつ始める
日常生活での活動量を増やす：階段の使用、こまめな立ち上がりなど
続けられる運動を選ぶ：楽しく続けられるものが理想的

その他の生活習慣の改善

1. 体重管理

適正体重の維持：BMI 22を目標に
特に内臓脂肪の減少：おなか周り（男性85cm未満、女性90cm未満）

2. 禁煙

たばこは善玉コレステロールを減らし、血管のこうかを進める

3. ストレス管理

過度のストレスは食習慣の乱れや脂質代謝に悪影響を与える
適度な休息と十分な睡眠を確保する

4. 定期的な健康診断

血液検査で脂質プロファイルを定期的に調べる
早期発見・早期対応が重要

サプリメントの活用

サプリメントはあくまで補助的な手段として考え、医師の指導のもとで利用するのが望ましいです。

EPA・DHA：青魚に含まれる成分で、中性脂肪の低下に効果的
食物繊維サプリメント：コレステロールの吸収を抑える
植物ステロール：コレステロールの吸収を妨げる
大豆イソフラボン：コレステロール代謝に有効

まとめ

脂質異常症の予防と改善には、食事、運動、生活習慣の総合的な見直しが欠かせません。一時的な対策ではなく、継続的な生活習慣の改善が重要です。特に以下の点を心がけましょう：

バランスの良い食事（特に脂質の質と量に注意）
定期的な有酸素運動（毎日30分以上）
適正体重の維持
たばこをやめて適度な飲酒を心がける
ストレス管理と十分な睡眠
定期的な健康診断による数値の確認

これらの対策を日常生活に取り入れることで、脂質異常症を予防・改善し、心臓や血管の病気のリスクを下げることができます。重度の脂質異常症の場合は、医師の指導のもと薬による治療と併用することも大切です。健康的な生活習慣の維持が、長期的な健康と脂質異常症の改善の鍵となります。

脂質異常症予防のまとめ

脂質異常症予防の鍵は、バランスの良い食生活と適度な運動習慣の確立です。具体的には、飽和脂肪酸（肉の脂身、バター、チーズなど）の摂取を控え、不飽和脂肪酸（オリーブオイル、青魚など）を適量摂取することが重要です。また、食物繊維を多く含む野菜や果物、全粒穀物を積極的に取り入れ、糖質や塩分の過剰摂取を避けましょう。

運動面では、週に150分以上の有酸素運動（ウォーキング、水泳など）を継続することが効果的です。さらに、禁煙、適正体重の維持、過度の飲酒を避けることも大切です。定期的な健康診断で血中脂質値をチェックし、早期発見・早期対応を心がけましょう。