今回は遺産分割をしないについて解説いたします。遺産分割協議をしない方が最近いらっしゃいます。相続が開始されても、相続の手続きや遺産分割をしなくても本当に大丈夫でしょうか?相続手続きをして、名義変更や登記などをしないと、後日大変なことが起きる可能性があります。そのため、相続の開始を知ったときには、できるだけ早く相続手続きを開始してください。よろしくお願いします。
遺産分割協議をしなかった場合
預貯金口座の名義人が亡くなったからといって、その口座が即時凍結されるわけではありません。そのため、金融機関で相続手続きをしていない場合は、相続人が勝手に預貯金を引き出すことが出来てしまいます。
遺産分割協議はいつまでしなければいけないという期限はありません。
預貯金口座の名義人が亡くなってから10年間遺産分割協議をしていない場合は、今からでも遺産分割協議をすることが出来ます。
民法でそれぞれの相続分が定められているので、お互いに手続きに協力し合えば、遺産分割協議をする必要はありません。
しかし、多くの場合は話し合いが必要で、遺産分割協議をしないまま放っておくと、何らかのトラブルが発生する可能性があります。
遺産分割協議を先送りにした場合の問題点①
被相続人が亡くなり、配偶者がすでに亡くなっていて、長男と次男の子が2人いたときに、遺言書がない場合は長男と次男が相続人になります。遺産分割をしないまま後日次男が亡くなってしまった場合、長男は次男の相続人である、次男の配偶者とその子と遺産分割協議が必要となってきます。本来であれば、被相続人の遺産については長男と次男で遺産分割協議をすることが出来ましたが、遺産分割協議をしないまま放っておいたために、次男の代わりに、その相続人である、次男の配偶者とその子と遺産分割協議をしないといけなくなります。
遺産分割協議を先送りにした場合の問題点②
祖父母の代から自宅の名義人変更をしていなかったときに、自宅を売却することになった場合、そのまま売却することは出来ず、不動産の名義を親から子などへ変更する相続登記が必要となります。このとき、相続関係者が10人いる場合は、相続関係者10人全員の同意が必要となります。
相続関係者がたくさんいる場合は、まったく面識のない人も出てきます。その場合、連絡を取るだけでも大変手間がかかり、同意を得るまでに時間がかかります。
相続税の申告は被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月となっているので、遺産分割協議はできるだけ早く行ったほうがいいです。
※被相続人が亡くなることで相続が開始すると、被相続人の財産は、遺産分割が行われるまで、相続人全員の共有の財産となるので、遺産分割がなされていない場合は、被相続人の財産を自由に処分することは出来ませんので気をつけてください
遺産分割協議が整わない
遺産分割協議は相続人全員でしないといけません。一人でも参加しなかった場合は無効となりますし、1人でも合意しない人がいると、遺産分割協議が成立しません。遺産分割協議が成立しないときは、住所を管轄している家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。
遺産分割協議で相続人全員の合意が得られなかった場合は、意見が対立した相続人の住所を管轄している家庭裁判所に、遺産分割調停の申し立てをすることになります。
遺産分割調停は、裁判をするわけではありませんので、必ず弁護士に依頼する必要はありません。
遺産分割調停では、家事審判官と調停委員で構成される調停委員会が、各相続人から話を聞いて、必要な資料を提示させ、遺産についてもう一度裁判所で値段を算出したり、事情を考慮して、解決が出来るように解決案を提案したり、解決するために必要なアドバイスをしたりしながら話し合いが進められます。遺産分割案について相続人の合意が得られれば、調書に記載されて調停が成立します。
相続人の合意が得られない場合は、調停は不成立になり、裁判官がさまざまな事情を考慮して審判しますので、調停手続きは審判手続きに移行します。
審判手続きに移行した場合は、ほとんどの場合、法定相続分に従って遺産が分割されます。
※相続人の中に海外に住んでいる人がいる場合に調停手続きをする場合は、東京家庭裁判所で行います。

遺産分割調停で話し合っても解決できない場合は遺産分割裁判が行われます。
遺産分割裁判では、それぞれ主張している内容を家庭裁判所に提出ことになります。提出書を受け取った家庭裁判所は、提出書をもとに事実の調査や証拠調べが行われ、遺産に関する者や権利などの一切の事情を考慮して裁判官が決定することになります。
遺産分割調停は1ヶ月に1回ぐらいのペースで行われます。そのため、遺産分割調停は最低でも6ヶ月、一般的には1年ぐらいかかります。
※ 相続税の申告は相続開始から10ヶ月となっていますので注意が必要です。
遺産分割協議のやり直し
遺産分割協議のやり直しとは一度成立した遺産分割協議をもう一度やり直すことを言います。
遺産分割協議の原則
相続人全員が遺産分割協議の内容に同意をして遺産分割協議書に署名・捺印をしているのでやりなおすことができません、
遺産分割協議の例外
① 一部の相続人が欠席している状態で遺産分割協議がされたなど、遺産分割協議が法的に無効になっている場合は遺産分割協議をやり直すことができます。
遺産分割協議が無効になる場合
1. 亡くなられた方の前妻と子供が出席していない
2.相続人の中に認知症の人がいた。(代理人なし)
3.相続人の中に未成年がいた。(代理人なし)
4.相続人以外の第三者が出席していた。
5.脅迫により相続人に署名・捺印をさせた。
② 相続人全員の同意がある場合は遺産分割協議をやり直すことができます。条件として、相続人全員の同意が必要となるため、現実的には難しいと思われます。

遺産分割協議をやり直した場合
・遺産分割協議で全員の同意が得られた場合は、財産の所有権が相続人に移動している可能性があります。この状態で遺産分割協議をやり直して、財産の所有権が他の相続人に移動すると、税法上、贈与あるいは譲渡をしたとみなされます。
最初の遺産分割協議で財産の所有権が移動したときに相続税を支払い、2回目の遺産分割協議で財産の所有権が他の相続人に所有権が移動したときには、贈与税や譲渡所得税が課税されます。
さらに、不動産を最初の相続人から新しい相続人に名義変更するときには、登録免許税や不動産取得税を支払う必要があります。
- 最初の遺産分割協議が法的に無効の場合は、はじめから遺産分割協議が無かったものとみなされるため、相続税の申告も無かったものとみなされます。そのため、新規に贈与税や譲渡所得税などは課税されません。
- 遺産分割協議のやり直しをするときには専門的な知識が必要になるため、相続の専門家に相談したほうがいいです。
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