今回は、遺言書の効力について解説いたします。被相続人が遺言書を遺している場合、その遺言書の内容に従って相続手続きが行われますので、遺言が有効であるかどうかは遺産相続手続きを行うときに重要な分かれ目になります。法的効果を発生させることができる遺言書と無効となる遺言書にはどのような違いがあるか、遺言書の内容を実現させる方法についてご紹介いたします。
この記事の目次
遺言書の法的効力
遺言書に書かれた内容は法的に以下のような効力があります
① 相続分の指定
「長男に遺産の4分の3を相続させる」
② 相続人以外に財産を遺す指定
「介護でお世話になったXに有価証券を遺贈する。」
③ 結婚外で生まれた子の認知
「Bとの間に生まれた子のCを認知する。」
④ 遺産分割方法の指定
「妻に土地と建物を相続させる。」
⑤ 死後5年以内の遺産分割を禁止
「相続開始から5年間は遺産の分割を禁止する。:
⑥ 遺言執行者の指定
「長男を遺言執行人に指定する。」
⑦ 相続人の排除
「次男を排除する。」
遺言書で「全財産を妻に相続させる。」と書いても有効ですが、他に相続人がいる場合は、遺留分があるので、相続人の遺留分を考慮して遺言書を書いたほうがいいです。
※被相続人が認知症になった状態で遺言書を書くと遺言書が無効になった場合がありますので、遺言書は出来るだけ早く書いたほうがいいです。
※ 相続人全員の合意があれば、遺言とは異なる内容にて被相続人の残した財産を分けることも出来ます。
※被相続人が遺言を残していた場合でも、その遺言の内容などに不備があり、無効となったときは遺言がない場合と同様の処理を行うこととなります。
遺言書に書かれている内容の実行について
・遺言書を作成したときは、その内容の実行が可能かどうか確認したほうがいいです。
・一筆の土地を分筆して相続人で相続する場合は、近隣の方の同意が必要となりますので、注意が必要です。
・遺言書に書かれた内容は必ず実行できるとは限りません。
・遺言書で相続時に土地を分筆する場合は、あらかじめ、土地の分筆登記をしたほうがいいと思われます。
・遺言書で預貯金を相続させるときに、「長男に1000万円、次男に1000万円相続させる。」と金額を明示して書いてしまうと、遺言書を書いた後に、入院をしたり、介護老人ホームに入居して、多額の預貯金を使ってしまい、遺言書の内容を実現できなくなってしまう可能性があります。そのため、遺言書で預貯金を相続させる場合は、金額を明示するのではなく、割合で相続させたほうがいいです。
遺言書の遺言執行者の指定
遺言執行者とは遺言書に書かれている内容にしたがって、遺産を管理し、分割し、名義変更する権限を持つ人のことをいいます。
遺言書で結婚外で生まれた子を認知する場合や、相続人を廃除する場合は遺言執行者の指定が必要となります。
遺言書に遺言執行者が指定されている場合は、相続人が勝手に遺産の分割や名義変更などの処分することは原則としてすることが出来ません。相続が始まったときに、遺言執行者に連絡して、手続きを行ってもらうよう依頼しましょう。
※未成年者や破産者は遺言執行者に指定することは出来ません。
※相続人や受遣者(遺言で贈与を受ける人)、または弁護士や行政書士などの専門家を指定することもできます。
■相続財産から支払いや弁済をしたい場合
相続財産の中には
プラスの財産
・現金、預貯金
・不動産
・株券、有価証券
・自動車
・骨董品、貴金属
マイナスの財産
・債務
・借金の返済や支払い
があります。
マイナスの財産について遺言書で指定をしないと、
マイナスの財産についても相続分で分割されます。
たとえば、父と母と子供2人の4人家族で、
100万円の債務がある父親が亡くなった場合、
母が50万円
子供がそれぞれ25万円ずつ
債務を負担することになります。
この割合は遺言書で指定することができます。
「長男に全財産の3分の2を相続させ、借金の返済を全部してもらう。」
とすることができます。
このとき、貸主(債権者)が、次男に対して返済の請求をしてきたときは、
貸主に対しては相続分の負担があるため、支払いを拒むことはできません。
支払いをしたときは、長男に返還請求をすることができます。
遺言書に書かれている内容に不満のある人がいる場合
たとえば、
・自分への相続分が少なすぎる。
・遺言書の内容がおかしい
・他の相続人への相続分が多すぎる
・知らない人に遺贈されている
・非営利団体に寄付されている。
・指名された相続執行人が信用できない。
こういう風に不満を持った人は、遺言書の書き方に問題がある。筆跡が違うなどと言って
遺言無効確認訴訟を起こす場合があります。
遺言無効確認訴訟を起こされた場合は、判決が出るまでに手間と時間がかかります。
そのほかにも、
・遺言書にかかれていないが、他にも財産がある。
・遺留分がある。
などと言ってきて、遺産分割協議をすることになります。
遺言書の内容に不満がある人が1人や2人の場合は、遺言書は無効になりませんが、
相続人全員が遺言書のないように不満がある場合は、
相続人全員で遺産分割協議をすれば、遺言書と違う方法で遺産を分割することができるようになります。
遺言書とエンディングノートの違い
遺言書と違って、エンディングノートには法的効力はありませんが、もしエンディングノートを書いた人が、急に他界されたとき、その人の財産がどこにあるのか、また、どんな人間関係を築いていたのかについてわかるので、遺された遺族にとっては大切なノートになります。
遺言書とは
① 死後の相続など法律に関することについて
② 自分の意思を法律上効果があるように
③ 一定の方法で書いたもの
エンディングノートとは
① 法律効果がない
② 自分の死後の希望などを書き残す。
③ 書き方は自由。
となります。