この記事の目次
はじめに:高血圧と果物の基本的な関係
高血圧の方にとって、果物は基本的に良い食べ物です。多くの果物には血圧を下げる働きがあるカリウムがたくさん含まれており、からだの余分な塩分を出す手助けをしてくれます。ただし、高血圧の方が「どんな果物でも安心して食べられる」わけではありません。
高血圧の方が果物を選ぶときには、次の3つのポイントに気をつける必要があります:
この記事では特に「食べない方がよい果物」に注目して、詳しく説明していきます。

高血圧の薬を飲んでいる方が注意すべき果物
1. グレープフルーツとその仲間たち
高血圧の薬を飲んでいる方が最も気をつけるべき果物は、グレープフルーツです。これは薬との相性の問題から生じています。
グレープフルーツには「フラノクマリン類」という特別な成分が入っています。この成分は、からだの中で薬を分解する酵素の働きを妨げてしまいます。その結果、薬が必要以上に体に残り、効きすぎてしまう危険性があるのです。
具体的には次のような症状が起こる可能性があります:
グレープフルーツの影響は食べた日だけでなく、2~3日間続くことがあります。そのため、高血圧の薬(特にカルシウムチャネル拮抗薬と呼ばれる種類)を飲んでいる方は、グレープフルーツを食べないよう注意が必要です。
2. グレープフルーツ以外の注意すべき柑橘類
同じように気をつけなければならないのは、グレープフルーツと同じ「フラノクマリン類」を含む柑橘類です。主に次のような果物が当てはまります:
これらの果物も、グレープフルーツと同様に高血圧の薬の効果を強めてしまう可能性があるため、薬を飲んでいる方は注意が必要です。
3. 安全に食べられる柑橘類
一方で、次の柑橘類は比較的安心して食べることができます:
これらの果物にはフラノクマリン類がほとんど含まれていないため、高血圧の薬を飲んでいても食べても問題ないとされています。
腎臓機能が低下している高血圧患者の注意点
高血圧と腎臓病は深いつながりがあります。高血圧が続くと腎臓に負担がかかり、逆に腎臓の調子が悪くなると血圧が上がりやすくなるという悪い循環が起きることがあります。
1. カリウムが多い果物の制限
腎臓の機能が低下している高血圧の方は、カリウムの摂取に注意が必要です。健康な腎臓であれば、カリウムはおしっこから適切に出されますが、腎機能が低下するとカリウムを十分に排出できなくなります。
その結果、血液の中のカリウム濃度が高くなり(高カリウム血症)、不整脈などの危険な状態を引き起こす可能性があるのです。
腎機能が低下している方は、カリウムが特に多い次のような果物の摂取を控える必要があります:
これらの果物は100gあたり300mg以上のカリウムを含むものが多く、腎機能が低下している方は医師に相談したうえで適切な量を守ることが大切です。
2. 腎機能低下者のカリウム制限目安
腎機能が低下している高血圧の方には、通常1日のカリウム摂取量を1500mg~2000mg以下に抑えることが勧められています。これは個人の腎機能の状態によって違いますので、必ず医師の指示に従いましょう。
糖分の多い果物と高血圧
1. 糖尿病を併発している場合の注意点
高血圧と糖尿病は一緒に起こりやすい病気です。糖尿病も持っている高血圧の方は、糖分の多い果物の摂取には特に気をつける必要があります。
糖分が多い果物としては以下のようなものがあります:
- バナナ(特に完熟したもの)
- マンゴー
- ぶどう
- さくらんぼ
- 果物の缶詰(シロップ漬け)
- ドライフルーツ
これらの果物は糖分が集中しているため、一度にたくさん食べると血糖値が急に上がる可能性があります。高血圧と糖尿病の両方がある方は、これらの果物を食べるときは量に注意し、食事全体のバランスを考えることが大切です。
2. 果物ジュースの注意点
果物そのものよりも注意が必要なのが果物ジュースです。ジュースは果物の糖分が濃縮され、食物繊維が少ないため、血糖値を急に上げやすいという特徴があります。
高血圧の方、特に糖尿病も併発している方は、果物ジュースよりも果物そのものを適量とる方がよいでしょう。どうしてもジュースを飲みたい場合は、砂糖が加えられていない100%ジュースを選び、量を少なめにすることをお勧めします。
高血圧の方におすすめの果物の食べ方
1. PREPの法則で果物を選ぶ
PREP法則とは、高血圧の方が食品を選ぶときに参考になる考え方です。
- P(Portion):適量を守る
- R(Regularly):定期的に食べる
- E(Evenly):一日の中でバランスよく分ける
- P(Properly):適切な調理法で食べる
この法則に基づいた果物の食べ方をご紹介します。
2. 適量を守る(Portion)
果物は健康に良いものですが、食べすぎはよくありません。一般的な目安として、1日あたり果物は200g程度(みかん中サイズ2個分、りんご半分程度)が適量とされています。
特に糖分が気になる方は、食事の後のデザートとして少しずつ食べるのがお勧めです。
3. 定期的に食べる(Regularly)
果物に含まれるカリウムやビタミン、食物繊維などの栄養素は、毎日少しずつ摂取することで効果を発揮します。一度にたくさん食べるよりも、毎日少しずつ食べる習慣をつけると良いでしょう。
4. バランスよく分ける(Evenly)
一日の中で果物を食べるタイミングを分散させることも大切です。例えば、朝食時に小さなりんご半分、昼食後にみかん1個など、分けて食べることで血糖値が急に上がるのを防ぎます。
5. 適切に準備する(Properly)
果物の中には皮をむいたり、種を取り除いたりするものもあります。柑橘類の白い筋(アルベド)には血圧を下げる働きのあるフラボノイドが含まれているため、可能であれば一緒に食べると良いでしょう(ただし、薬を飲んでいる方は前に説明した注意が必要です)。
具体的な果物の選び方
1. 高血圧の方におすすめの果物
高血圧の方に特にお勧めの果物は以下の通りです:
- りんご:食物繊維が豊富で、血圧を安定させるポリフェノールを含みます
- キウイフルーツ:カリウムが豊富(ただし腎機能低下がある場合は注意)
- すいか:カリウムを含み、水分が多く利尿作用があります
- みかん:ビタミンCが豊富で、高血圧薬を飲んでいても比較的安全です
- ベリー類(いちご、ブルーベリーなど):抗酸化物質が豊富です
2. 果物を選ぶ際のポイント
- 新鮮なものを選ぶ:鮮度が高い果物ほど栄養価が高いです
- 旬のものを選ぶ:旬の果物は栄養価が高く、値段も手頃です
- 無農薬・減農薬のものを選ぶ:可能であれば農薬の少ないものが望ましいです
- 多種類の果物をローテーションで食べる:様々な栄養素を摂取できます
注意すべき果物加工品
1. フルーツ缶詰
フルーツの缶詰、特にシロップ漬けのものは砂糖がたくさん含まれています。高血圧の方、特に糖尿病も併発している方は避けるか、ライトシロップや果汁づけのものを選びましょう。
2. ドライフルーツ
ドライフルーツは生の果物に比べ、カリウムと糖分が濃縮されています。特に腎機能が低下している方は食べる量に注意が必要です。また、市販のドライフルーツには砂糖が加えられていることも多いため、無添加のものを選ぶと良いでしょう。
3. ジャムやマーマレード
果物を使った加工品であるジャムやマーマレードにはたくさんの砂糖が含まれています。特に柑橘系のマーマレードには、フラノクマリン類が残っている場合があり、高血圧薬を飲んでいる方は注意が必要です。
まとめ:高血圧の方が果物を選ぶ際のチェックリスト
高血圧の方が果物を選ぶときに確認すべきポイントをまとめます:
- 薬との相互作用をチェック
- 高血圧薬(特にカルシウム拮抗薬)を飲んでいる方は、グレープフルーツやその仲間(ぶんたん、夏みかん、はっさくなど)を避ける
- 腎臓の状態を考慮
- 腎機能が低下している方はカリウムの多いバナナ、アボカド、ドライフルーツなどの摂取量に注意
- 糖分の量をチェック
- 糖尿病も併発している方は、糖分の多いバナナ、マンゴー、ぶどうなどの食べる量を控える
- 果物の適量を守る
- 一日200g程度(みかん2個分やりんご半分程度)が目安
- 加工品に注意
- ジュース、缶詰、ジャム、ドライフルーツなどの加工品は糖分が多いため注意
- 新鮮な旬の果物を選ぶ
- 栄養価が高く、からだに優しい果物を選ぶ
正しい知識で果物を選ぶことで、高血圧の方も果物の栄養を安全に摂取できます。自分のからだの状態や飲んでいる薬に合わせて、適切な果物を適量食べることが大切です。わからないことがあれば、必ず医師や栄養士に相談してください。
果物は基本的に健康に良い食品ですが、高血圧の方は自分の状態に合わせて賢く選ぶことで、より健康的な食生活を送ることができるでしょう。
