高齢者のアルコール摂取と認知症には関係があるといわれています。世界保健機関(WHO)によると、国際がん研究機関は約10年前にアルコールを発がん性物質の最も高いグループである「グループ1」に指定しました。グループ1にはアスベストや放射線、タバコなども含まれており、アルコールは少なくとも7種類のがん(大腸がん、乳がん、頭頸部がんなど)を引き起こすとされています。
また、最新のデータによれば、ヨーロッパの研究結果をまとめたところ、アルコールによるがんの半数以上が軽度~中程度のアルコール摂取によって引き起こされていることが示されています。EU(欧州連合)では、2017年だけで軽度~中程度のアルコール摂取による発がん例が約23,000件もあったとされています。また、WHOによれば、2016年の飲酒による死亡者数は全世界で300万人に上り、その約5%が疾患やケガによるものと推定されています。
さらに、高齢者にとっては認知症との関係も考えられます。アルコールの摂取は認知症のリスクを増加させることが示されており、長期間にわたる過剰な飲酒は認知症の発症リスクを高めるとされています。特に高齢者は代謝の低下や薬物との相互作用の影響を受けやすく、アルコールの摂取による認知症のリスクを避けるためには、適度な飲酒を心掛ける必要があります。
以上のような理由から、WHOはがんのリスクは「あらゆるアルコール飲料の最初の1滴から」高くなると結論付けています。ただし、完全に禁酒するべきかどうかについては、一般的に言われるように、「ケースバイケース」や「時と場合による」ということも考慮しながら、自己判断せずに医師や専門家に相談することが大切です。
特に高齢者の場合は、健康状態や薬物の使用など、個別の状況に応じてアルコール摂取の適切な量を判断する必要があります。
また、アルコールの摂取を控えることが難しい場合には、飲酒の際には適度な量を守る、飲み物を水やジュースで割る、飲み会の間に水分を摂取するなどの工夫をすることも推奨されています。
認知症との関係については、アルコールの過剰摂取が認知症のリスクを増加させるという研究結果がありますが、詳細なメカニズムはまだ解明されていないため、より深い研究が必要とされています。しかし、高齢者にとってはアルコールの摂取を適度に制限し、健康な生活を送ることが重要であり、認知症の予防にも一定の役割を果たすと考えられています。
最終的には、医師や専門家の指導に従い、自身の健康状態やライフスタイルを考慮して、アルコールの摂取量を適切に管理することが重要です。また、定期的な健康チェックや医師との相談を通じて、自身の健康管理を徹底することが推奨されています。