家族信託以外の資産承継については①生前贈与、②遺言、③生命保険、④成年後見任意後見制度があります。最初にこれらについて説明します。

生前贈与

関連条文 民法第549条

贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

参照: 民法第549条

親が子に財産を無償で与えるときに使われます。この場合、親の申し込みがあって、この承諾があったときに、生前贈与契約が成立します。

 親が元気なうちに財産を希望する人に譲りたいときに、生前贈与契約をすることが出来ますが、認知症など、精神上に問題が発生すると、生前贈与契約をすることが出来ません。とても便利な制度ですが、不動産、自社株式など高額な財産を生前贈与するときに、贈与税、不動産取得税、登録免許税などが高いため、ほとんどの方が生前贈与を利用していません。

遺言

関連条文:民法第960条

遺言は、相手方のない単独行為である。遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる(985条1項)。すなわち、効力を発したあとに、遺言者の意思を確認することはできないため、遺言の解釈について混乱を避けるため、方式が厳格に法定されている。 具体的な法定内容については、968条(自筆証書遺言)、969条(公正証書遺言)、970条(秘密証書遺言)に規定されている。

参照: 民法第960条

遺言は生前贈与とは違い、契約ではなく、遺言者の単独行為となりますので、相手方の承諾は必要ありません。遺言の効力は、遺言者の死亡により発生します。遺言者は生前に、自分が亡くなった後の財産を誰に譲るか決めることが出来ます。そのため、遺言で財産の譲り先がすべて指定されている場合は、法定相続人遺産分割協議が不要となります。

遺言ですべての財産の譲り先を一人だけにすると、他の法廷相続人から遺留分減殺請求が行われるときがあります。その場合、どの財産から遺留分減殺請求者に財産を与えていくか、順序指定などをすることが出来ます。

関連条文 第1034条

    遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

参照: 第1034条

遺言では遺言者が亡くなった後の財産の譲り先を決めることが出来ますが、自分以外の方が亡くなった後の財産の譲り先を指定することは出来ません。もし、子に譲った財産を孫に譲りたい場合は、子に協力してもらって、子にも遺言書を書いてもらう必要があります。

遺言は、 遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。

条文:民法第985条

そのため、遺言者が認知症などの精神上に問題が発生すると、財産管理が出来なくなるので、不動産を売却することが出来ません。

また、遺言はいつでも撤回、書換えをすることが出来ます。

家族信託以外の資産承継

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

関連条文 民法第1022条

そのため、遺言を書いた後に、遺言者が遺言書に書いた財産の一部を処分したときは、遺言書を撤回したとみなされます。

    前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。

関連条文:第1023条

相続人が自分に相続財産がたくさん入ってくるように遺言を書きかえる場合があります。

また、遺言の存在を知らずに成年後見人制度を利用すると、成年後見人が財産を処分してしまい、遺言の内容を実現できなくなる場合もあります。

生命保険

被保険者が亡くなったときに受取人が生命保険金を受け取る方法です。生命保険金は、受取人固有の財産となりますので、遺産分割協議の対象とはなりませんし、遺留分減殺請求の対象にもなりません。

 生命保険には非課税枠がありますので、相続税対策にもなりますので、とても便利な方法ですが、対象となる財産は現金のみで、不動産などは対象外となります。そのため、生命保険だけでは、すべての財産を相続人に譲ることが出来ません。

成年後見、任意後見制度

本人が認知症になってしまうと、契約行為、不動産の売買や建て替え、預貯金の引き出しや振込みなどが出来なくなります。これを代理で出来るようにした制度が成年後見制度です。しかし成年後見人は、本人のために法律行為、財産管理、身上監護をしますので、相続人にメリットがある相続税対策などをすることは出来ません。また、財産管理を家族だけで行うことが出来ず、家族のほかに弁護士や 司法書士 、行政書士などの第三者が本人の預金通帳などを管理する場合があります。その他に、成年後見人制度を利用すると、原則本人の能力が回復するまであるいは、亡くなるまで続き、毎月家庭裁判所が決定した成年後見人の報酬が発生するため、累計で高額になってしまいます。そのため、成年後見制度を利用することをためらう方が多いのが現状です。

 このように、認知症になると、本人が認知症から回復するまで、あるいは亡くなるまで、本人以外の家族の方でも財産の管理や処分をすることが出来なくなります。

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